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就労・復職を目指す上で押さえておきたい「睡眠」
脳科学の観点からみる「6時間睡眠」の効果とは?

 メンタル不調によって離職した方や休職中の方が就労や復職を目指す上で、どのようなポイントを押さえておくことが重要でしょうか。そのひとつに、「睡眠」との向き合い方が挙げられます。

 ここでは、そんな睡眠について「脳の健康」という観点からご紹介します。

目次

1.適切な睡眠時間は「6時間」?

適切な睡眠時間
 毎日の生活の中で、それほど長く寝ていないにもかかわらず、「眠くないから大丈夫」とつい睡眠を軽んじる経験は、誰にでもあるかもしれません。しかし、そういった方は知らず知らずの間に睡眠の落とし穴に落ち、日々のパフォーマンスが落ちているというケースもあります。

 もしかすると、「適切な睡眠時間は6時間ほど」と根拠もなく考えてしまっている方もいるかもしれません。しかし、脳科学の観点から睡眠の重要性を考えると、6時間の睡眠は決して適切とはいえないことが分かっています。これを示しているのが、アメリカのペンシルバニア大学で行われた実験結果です。

 ペンシルバニア大学では、「認知機能」と「睡眠時間」の関係を明確にするためにある実験を行いました。この実験では、21歳~38歳の健康な被験者48名を、睡眠時間の長さで4つのグループに分けました。

①徹夜グループ
②4時間睡眠グループ
③6時間睡眠グループ
④8時間睡眠グループ

 徹夜グループは3日間、それ以外の(4時間~8時間睡眠)グループは合計14日間過ごしてもらい、認知機能検査を毎日実施しました。その認知機能検査の結果は、以下のようになりました。

 8時間睡眠のグループの注意機能は2週間にわたって低下が見られませんでしたが、3日間の徹夜をしたグループは、日を追うごとに注意力が著しく低下していきました。「徹夜をすると注意力が下がる」というのは、多くの方の認識と合致しているといえます。

 4時間睡眠のグループの結果を見ると、2週間後の認知機能は3日間の徹夜グループと同じレベルまで下がっていました。4時間という睡眠時間の少なさを考えると、徹夜グループと同じレベルまで下がることは想像に難くないかもしれません。

 これに対して、一般的に「十分に眠っている」と考えられがちな6時間睡眠のグループの注意力の変化はどうだったのでしょうか。実験の結果、6時間睡眠を2週間続けることで、徹夜1日目よりも注意力が低下(認知機能検査の成績が悪化)していることが分かりました。

2.「眠たくない」なら大丈夫?

 毎日のように6時間睡眠で過ごしても、「眠たくない」と感じる方は多いかもしれません。それゆえ、「眠たくない=健康に問題ない」と考えられがちです。しかし、こうした考えは次の実験結果を見ると改める必要があることが分かります。
睡眠時間と認知機能検査の結果2
 上記のペンシルバニア大学の実験では、認知機能検査とともに、眠気の自覚具合についても調査をしています。その結果、上図に示すように、4時間睡眠のグループと6時間睡眠のグループは、2週間にわたって眠気の自覚があまりないことが分かりました。

 これらの結果から分かるのは、6時間睡眠を2週間続けた結果、注意力は徹夜1日目のレベルにまで低下しているにもかかわらず、自分自身でそのことに気付けていないという点です。ここに、6時間睡眠の落とし穴の怖さがあります。眠気を感じていない場合でも注意力が低下している場合があり、さらには注意力が低下していることに気付かないケースも多く考えられるため、必ずしも「眠たくない=大丈夫」というわけではないことが分かります。

 日常生活の中でミスを繰り返してしまって悩んでいる方は、睡眠時間を見直してみる必要があるといえます。もしかすると知らず知らずのうちに、睡眠の落とし穴に落ちているかもしれません。落とし穴に落ちてしまっているにもかかわらずそれに気付けていないのは、日々の体調管理を行っていく上での危険信号といえます。

3.なぜ睡眠が大切なのか?

 なぜ睡眠は、人にとって重要なのでしょうか。睡眠には、大きく分けて3つの役割があると考えられています。
睡眠の主な役割

①脳を休ませる

 ひとつめの役割は、「脳を休ませる」という役割です。脳は身体と同様に、使い続けることで疲労が蓄積するため休息が必要となります。この休息こそが、睡眠です。もしも休息(睡眠)の時間が不足すると、脳の疲労が蓄積し続け「集中力が続かない」「物忘れが増える」といったパフォーマンスに影響が生じたり、「ネガティブになる」「イライラする」といった感情面への悪影響も生じるようになります。こうした状態が続き、放置すると、うつ病を患うケースもあります。

②脳の老廃物を活発に除去する

 2つめの役割は、「脳の老廃物を活発に除去する」という役割です。睡眠はまさに、脳の掃除の時間といえます。脳も身体と同様に、使えば使うほど老廃物が溜まります。「リンパマッサージ」や「デトックス」といった身体の老廃物を排出することについてはしばしば話題になりますが、「脳の老廃物」となると話題になりにくく、それゆえ実感が湧かないかもしれません。

 近年まで、どのようにして脳の老廃物が外に排出されているのかは判明していませんでした。しかし2013年、アメリカのロチェスター大学の研究により、脳内の老廃物を排出するシステムが発見されました。この研究によると、そのシステムは睡眠中に活発になることが分かっています。

 脳には、「神経細胞」と「グリア細胞」という細胞があります。睡眠中には、グリア細胞が縮み、神経細胞の周囲に隙間が生じます。この隙間を老廃物が流れていくことで、脳の健康が維持されます。こうしたメカニズムによって、起きているときよりも寝ているときのほうが効率よく老廃物が流れていくことが分かっています。言い換えれば、睡眠時間が短くなると脳内に溜まっている老廃物が流れずに、脳内に蓄積されていくことになります。

③身体を修復し、疲労を回復させる

 3つめの役割は、身体の修復や疲労回復の役割です。睡眠中は、成長ホルモンが多く分泌されます。成長ホルモンは「細胞の成長」や「傷を負った細胞の修復や再生」、「新陳代謝の促進」といった身体の修復や疲労回復に関係するホルモンです。
 これらが十分に分泌されていなければ、疲れが取れなかったり、免疫力が下がって風邪を引きやすくなったりします。そのため、健康を維持するためにはしっかりと睡眠をとり、成長ホルモンを分泌していく必要があります。

 成長ホルモンは、就寝から約3時間の間に多く分泌されるといわれています。特に、22時から2時までの間に多く分泌されると考えられているため、睡眠時間だけでなく、就寝の時間帯にも気を付けることが大切です。

まとめ


 知らず知らずのうちに陥ってしまう「睡眠に潜む落とし穴」。

 これまでに見てきたように、脳科学の観点からみると睡眠が人の活動にとって極めて重要であることが分かります。

 「6時間睡眠」と聞くと十分に寝ていると感じる方も多いかもしれませんが、6時間睡眠を2週間続けると、徹夜1日目以下のレベルまで注意力が下がってしまうことが分かっています。また、注意力が徹夜1日目以下にレベルまで下がっているにもかかわらず、眠気を全く感じていない場合はその問題に気付けていないということを意味しています。だからこそ、日々の生活の中で6時間以上寝ることを心掛けることが重要であることが分かります。日常生活の中でミスを繰り返してしまっているという方は、睡眠時間を見直すことが大切です。

 就労移行支援事業所のニューロワークスでは、就労や復職を目指す方に向けて脳と身体の健康を維持するブレインフィットネスをはじめ、運動や睡眠、食事に関するプログラムなど、さまざまなプログラムを提供しています。メンタル不調による離職や休職でお悩みの方や就労・復職をお考えの方は、ぜひご相談ください。プログラムの見学も承っております。

監修 : 杉浦理砂(脳科学者)

監修 : 杉浦理砂(脳科学者)
インクルード株式会社 ブレインフィットネス研究所 ディレクター
脳科学者、工学博士(応用物理)、東京都立大学特任准教授(現任)
プロフィール詳細はこちらのページよりご覧ください。

監修 : 江崎豪志
インクルード株式会社 ブレインフィットネス研究所 研究員
兼 プログラム開発チーム マネージャー
YouTubeチャンネル「ニューロチャンネル」にて、脳と身体の健康に関する動画にも多数出演

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