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人間関係 ポジティブ心理学

ポジティブ心理学に学ぶ、
心身の健康を実現するための「良い人間関係」

職場の人間関係であれ、私生活の人間関係であれ、円滑でない人間関係は、ときに心身の不調を引き起こします。人間関係が原因で退職や休職に至ってしまうというケースも考えられます。そのため、いかに人間関係を円滑にし、ストレスを感じない人付き合いを実現していくかが、社会人・組織人にとって重要であるといえます。

人間関係によるストレスが原因で体調をくずし、退職や休職に至った方にとっては、健全な人間関係の築き方は押さえておくべき大きなポイントです。安定した就労や復職を実現するためには、良い人間関係を築いていくことが大切です。

ここでは、「良い人間関係」をテーマに心身の健康のために大切にすべき人や良い人間関係の作り方についてご紹介します。

1.ウェルビーイングを構成する要素のひとつ

日常生活の中で、困っているときに協力してくれる人がいることは非常に重要です。ハーバード大学の研究では、心から支えられていると感じられる人間関係があるのとないのとでは、「ある」と答えた方のほうが幸福度が高いと報告されています。また、ハーバード成人発達研究の責任者は、「良い人生は良い人間関係からできてきる」と述べており、良い人間関係は幸せを増幅させると考えられています。

このような心身の健康を実現するための「良い人間関係」は、ウェルビーイングを構成する5つの要素である「PERMA」の3つめ「R:リレーションシップ」に該当します。

2.心身の健康のために、大切にすべき人

人間関係の観点から「心身の健康を実現」を考える上で、“特に大切にすべき人”は次の4つのパターンに分類することができます。

①適切に評価をしてくれる人

ひとつめのパターンは、自分の行動に対して良いか悪いかの適切な評価をしてくれる人です。これは主観的ではなく、社会からみた俯瞰的な評価をしてくれる人を指します。また、悪い点には改善点を挙げるなど、後につながるフィードバックをくれる人なども該当します。

②共感してくれる人

ふたつめに、自身に共感してくれる人が挙げられます。愚痴を聞いたり励ましたり、または相談に乗ってくれるなど、気持ちの面でサポートをしてくれる人などが当てはまります。話すことで自然とやる気になったり、元気になる人を思い浮かべると良いかもしれません。

③適切な情報をくれる人

むやみやたらに多くの情報をくれる人ではなく、自分が困っているときや課題に取り組んでいるときに、それらが解決するような情報や知識をくれる人などが該当します。たとえば、自分が抱えている悩みや課題を理解し、その解決につながるアドバイスをくれる人などが例として挙げられます。

④実際的な手助けをしてくれる人

物や労力の提供、または金銭面の支援をしてくれる人が挙げられます。より効率的に取り組むための支援をしてくれる人や、問題解決の手段を提供してくれる人などがその例です。

なお、心身の健康を実現するための良い人間関係に望ましい関係性は、それぞれ以下のように分類されます。

①適切に評価してくれる人
→評価的サポート(建設的な評価)

②共感してくれる人
→情緒的サポート(共感、思いやり)

③適切な情報をくれる人
→情報的サポート(アドバイス、提案)

④実際的な手助けをしてくれる人
→道具的サポート(援助、サービス)

こうした考え方は、ソーシャルサポートの考えに基づいています。ソーシャルサポートとは、もともとコミュニティ心理学者や社会学の概念ですが、社会的関係の中でやりとりされる支援や、周囲からの援助を指します。その後の研究で、このソーシャルサポートには私たちの幸福感を高めるような効果、たとえば「健康に良い活動を続けやすくなる」といった効果や、「ストレスの影響を和らげる」といった効果があることがわかりました。

前者は、たとえばダイエットのために運動や食事、禁煙などをしているときに周囲からの協力を得ることで長続きしやすくなるケースなどが挙げられます。これに対して後者では、ストレスを受けたときに周囲からのサポートを得ることによって上手く対処できるようになるケースなどがあります。

健全な毎日を過ごすためには、自分の身近にソーシャルサポーターとなりそうな人がいるかどうかを考えてみることが大切です。

3.良い人間関係を作る方法

良い人間関係をつくるためには、「良い知らせを一緒に喜ぶ」といった方法や、「感謝の言葉を伝える」といった方法があります。

①良い知らせを一緒に喜ぶ

良い知らせを聞いたとき、関心を持って一緒に喜ぶようにするのが良い人間関係をつくるためのポイントのひとつです。話の途中で口を挟んだり、自分のほうが話し始めたりしないよう注意が必要です。相手にその経験を十分に話してもらえるように「すごい! もっと聞かせてほしい!」「どうしたら上手くいったのか教えてほしい!」といった質問をしてみると良いかもしれません。その人が経験した喜びを、一緒に味わうという気持ちが大切です。

カリフォルニア大学のゲーブル博士は、こうした反応を「積極的ー建設的反応」と呼んでいます。

ゲーブル博士は、相手の良いニュースを聞いたときの反応を以下の4つのパターンに分類しています。

①積極的ー建設的反応(熱心な反応)
上述の例のように、相手の喜びを一緒に味わうような反応です。

②積極的ー破壊的反応(マイナスな面を指摘する反応)
「今日のご飯をおいしく作れた」という報告に対して、「でもカロリーが高そうだね」というような反応です。

③受動的ー建設的反応(控えめな反応)
一応一緒に喜ぶが、あまり関心を示さず、盛り上げないような反応です。

④受動的ー破壊的反応(無関心な反応)
無関心で喜びもせず、自分の話題にすり替えてしまう反応です。

上記の4つの反応のうち、①の「積極的ー建設的反応」はつながりを強め、関係性を良くするといわれています。ゲーブル博士が78組のカップルの反応を調査した結果、①の「積極的ー建設的反応」が多いカップルは、互いの信頼度や親密性、満足度が高く、リラックスして過ごしていたと報告されています。

②感謝の言葉を伝える

良い人間関係をつくるふたつめの方法は、感謝の言葉を伝える習慣を持つようにするという方法です。感謝の対象や言葉は、どのような内容であっても問題ありません。たとえば、「自分のために時間を使ってくれてありがとう」「気を遣ってくれてありがとう」など、日頃から感謝の言葉を伝えることで、幸せな感情が増え、良好な人間関係が築けるようになるといわれています。

感謝の気持ちを綴る筆記などをつけている方1,000人以上を対象に行った調査では、感謝の気持ちの効果として、「寛容になる」「外交的になる」「孤立感や孤独感を軽減する」といった効果がみられたことが確認されています。

4.まとめ

私生活であっても仕事であっても、人間関係は自身の健康やストレス状態に良くも悪くも大きな影響を与えます。特に、職場の人間関係が負担となって退職や休職に至った方であれば、これからの就労や復職を考える上で心身の健康を実現するための「良い人間関係」を築く方法を押さえておくことは急務といえるかもしれません。

今回は、健康やストレス緩和を実現する上で「大切にすべき人」について以下のタイプをご紹介しました。

・適切に評価してくれる人
・共感してくれる人
・適切な情報をくれる人
・実際的な手助けをしてくれる人

また、良い人間関係をつくるための方法として、
・良い知らせを一緒に喜ぶ
・感謝の言葉を伝える
という方法にも触れました。今後の私生活や仕事で良い人間関係を築くためには、これらを意識して実践していくことが大切です。

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記事監修者

H.S(公認心理師/精神保健福祉士)

長年精神科病院に勤務し、急性期から退院後まで、幅広く精神障害者への支援に従事。
精神保健福祉士、公認心理師。高崎健康福祉大学非常勤講師。

【参考文献・参考サイト】

(写真素材:PIXTA、photoAC)